【困りごと】人の物を盗ってしまう子への対応策はある??

公認心理師*けい先生

2025/02/08

はじめに

お子さんが、親の財布からお金をとってしまう、兄弟のもの、友達のものなど盗んでしまう、ということは、親にとってはとてもショックな出来事です。叱って二度としないと約束させても、また盗むことがあったらどうしよう…と不安になることがあるかもしれませんね。
この記事では物を盗んでしまうお子さんに、どう対応すればよいのかについて解説します。

まずは 理由を考える

お子さんが物を盗む理由は実はさまざまなことが考えられます。理由がひとつだけではなく、いくつか絡み合っていたり、お子さん自身は、どうして盗んだのかを説明できなかったり、そもそも自分でもよく分かっていなかったりすることもよくあります。そのため、周囲の大人がお子さんの行動の背景を考えることが大切です。
理由としては次のようなことが考えられます。

▪欲しい気持ちがコントロールできない
人の物を盗んではいけないということは分かっていても、欲しいと思った瞬間、衝動的にとってしまっている、ということがあります。


▪盗みがそれほど悪いことだと分かってない
大人にしてみると人の物を盗むということはとんでもないことです。ですが、今まで教わる機会がなかった場合、お子さんはそれほど悪いことだと理解できていないことがあります。教わっていた場合も、深く理解しないまま大きくなっているということもあります。
このような時、単純に欲しいという気持ちや好奇心から、人の物を盗むことがあります。


▪寂しさや不満な気持ちを抱えている
 普段は手のかからない良い子が、欲しくもない物を盗むということがあります。本当はかまってほしい、自分のことを見てほしいという気持ちが無意識に物を盗むという行動に表れます。


本人に真剣に伝える

周囲からは「悪いことは悪い、と厳しく𠮟るべきだ」と言われるかもしれません。ですが大きな声で叱るだけでは、十分に理解できないことがあります。「人の物を盗むことはとても悪いことである」「泥棒になったらお父さん、お母さんは悲しい、とても苦しむことになる」と伝えます。
その際、お子さんを責めるのではなく、お子さんが自ら「大変なことをしてしまった」ということを考えられるように冷静に伝えるようにしましょう。

相手に謝るよう促し、責任を取ることを教える

盗んだ物を返し、相手に謝罪させて、自分の行動に責任を取ることを教えます。相手がお友達なら、親も一緒に謝りましょう。親が心から謝る姿をお子さんが見ると、「こんなに大変なことをしてしまったのだ」と実感します。

自己コントロールの力をつける

悪いと分かっていても考える前に行動している、というタイプのお子さんは、盗み以外にも困りごとを抱えている可能性が高いです。盗みだけにフォーカスせず、他にも困っていることはないか見直してみましょう。
 刺激に反応しやすくて困ることが多いようであれば、興味を引くものを片付けたり、見えないようにしたりと環境調整の工夫をします。場合によっては受診、服薬を検討してみましょう。落ち着いた気持ちで過ごせる時間が増え、できることが増えて、自信や達成感につながります。

子どもの気持ちを受け止める

 何でもできる子は、いい子でいることを期待されがちです。親の手を煩わせずにうまく立ち回れるお子さんは、親に甘えられなくなり、親子関係に距離ができてしまっているかもしれません。もしそうであれば、この時の寂しさを受け止めてあげることが大切です。
 とはいえ、特別なことを言ったりしたりする必要はありません。抱っこしたり、一緒にいる時間を増やしたり、そっと抱きしめたりして、「大好きだよ」「いつもありがとう」と伝えてあげるといいですね。

叱り過ぎていたり、体罰を与えていたりする、という方がいらっしゃれば、それは一旦保留にしておきます。子どもはまだまだ成長中で、至らないことやできないことがたくさんあります。叱るより、「ここまでできてえらかったね」「がんばってるね」とできていることに注目し、お子さんの気持ちを受け止めてあげましょう。

おわりに

盗みをしてしまうお子さんの中には、発達障害のため行動のコントロールができないお子さんがいます。脳機能の問題のため、叱ってもあまり効果がないかもしれません。また情緒的な問題が背景にあるお子さんに対しても叱ることは逆効果になります。
 有名な心理学者の河合隼雄は『子どもと悪』という著書の中で、「(盗むことで)本当は何がほしかったのでしょうね」と私たちに問いかけます。そして、盗みを子どもからのメッセージとして何とかしてキャッチしたいという気持ちを持っていることが大切であり、大人が心を開いていると子どもは何かを伝えてくれるはず、と述べています。
 複雑に色々な事情が絡み合っている様子であれば、医療機関や相談機関のサポートを受けながら、盗みの背景にどのような理由があるのかを考え、お子さんに合わせた対応を考えていきましょう。

公認心理師*けい先生

経歴:公認心理師 27年目

心理士 27年 発達の偏り、不登校などの子育ての相談業務を担当してきました。2児の母です。

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