人前で全く話せない…場面緘黙ってなぁに?

言語聴覚士*はる

2025/02/10

はじめに

場面緘黙(ばめんかんもく)という言葉はご存じでしょうか?これは、子どもが特定の環境で言葉を発することが困難になる一方、自宅や安心できる環境では普通に話せるという症状が特徴です。今回は、場面緘黙に対する支援方法についてご紹介しますよ。

場面緘黙とは?

場面緘黙は、子供がある特定の場面で話すことができなくなる症状のことをいいます。例えば、幼稚園や学校では話せず、自宅や親の前でのみ話せるという様子のことです。
これは一見「ただの恥ずかしがりや」や「甘えている」などの様子と勘違いされてしまうことがありますが、決してそういうわけではなく、子供本人もどうしたらよいのか困っていることが多いです。子供は極度の緊張状態で常にいるので、無理やり話させようとすると徐々にリラックスできていた場所でも話せない状態になってしまうこともあります。

また、大切なのは発症は子供本人も、親も誰も悪くないということです。「親の育て方が悪い」などといわれて、悩む親御さんも多いようですがそれは絶対ないので安心してくださいね。
発生率は子供全体の0.2~0.7%で、やや女児に多いといわれています。通常5歳未満の子が発症することが多く、社会的な交流や発表などの機会が増える入園入学後に、症状がはっきりしてきます。

症状の特徴は?

・家族以外と話せない
・特定の友だちと小さい声で話す
・音読など決まったセリフや歌を歌うときは話せることもある
・話せないが元気で活発な子もいる

また、発話だけではなく、感情表現などが上手に表現できない子もいます。

・表情がとぼしい
・自分の気持ちを出しにくい
・動きがぎこちない
・人の目が気になる
・声を聞かれること、注目されることが怖い

また、家族と話せる子はその場面では普段通り活発に話していることが多いですよ。
これらの症状が少なくとも1か月以上続き、学校や社会生活にきたしているときに診断されます。

場面緘黙に対するサポート方法

場面緘黙の症状は、適切な対応をすることで軽減しますが、その期間は子それぞれによって違います。
本人にとって不安が低い場面から、少しずつ話すことに挑戦し、徐々に話したり、活動に参加したりできる状況を増やしていく「行動療法」と呼ばれる支援が多いですよ。

どうしても親としては焦ってしまい、早く話してほしいと声をかけてしまいますが、「長く付き合っていく」ということを念頭に置きながら関わりましょう。
まず、無理に人前で話すことを練習させるのではなく、学校の先生と情報を共有しながら、本人が「安心できる環境づくり」を行って、自然な形で少しずつ取り組んでいきます。
治療に必要な期間は子によって違うので、専門知識のある言語聴覚士や指導員と相談をしながら本人の気持ちを尊重して関わっていきましょう!

お家で出来るサポートは?

1. 子どもが安心できる環境をつくる
リラックスし、安心した環境を整えることが重要なので周囲の人と協力していきましょう!

2. 答えや反応を無理やり求めない
話せないからといって、無理やり話させようとすることは子供にとって辛い経験になってしまいます。しかし、話さないからといって、声をかけない、無視するのも子供はさらに不安になるので、普段通り声をかけ、言葉による反応がなくても、表情や動きでコミュニケーションをとれるように工夫してみるとよいですよ!

3. 非言語コミュニケーションの活用
言葉を発することができなくても、ジェスチャーや筆談など言葉を使わないコミュニケーション手段を提案していきましょう。
指差しでほしいものを選択したり、首振りとうなづきで答えられるような質問をしてコミュニケーションをとったりするとよいでしょう。

4. 少しでもできたことを褒める
今まで話すことや、感情表現することができなかった場面や状況で、どんな小さなことでもできたら褒めます。 そういったやりとりを繰り返し経験することが子供にとって自信につながり、次のやりとりのきっかけになります。

まとめ

今回は、場面緘黙についての説明と家庭でできる支援方法について説明しました。
場面緘黙と付き合っていくのは、親も不安や心配な気持ちを抱えながら、かつ子供の前ではいつも通りに接さなければいけないことも多いので、親側のケアも大切です。
抱え込みすぎないように、周囲の人に協力を求めたり、気持ちを話す機会をつくったりしてくださいね。 そして、子供には長い目でみて工夫をしながら、関わっていきましょう。

言語聴覚士*はる

経歴:言語聴覚士歴:10年目

2児の母をしながら、児童発達支援施設にて、楽しく遊びながら子供たちの「伝えたい!」という気持ちを育てることをモットーに

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