【言語聴覚士直伝】自分の気持ちが伝えられない子へのサポートは?
言語聴覚士*はる
2025/02/20
はじめに

お子さまと少しずつコミュニケーションがとれるようになってくると、会話が楽しいですよね。
しかし、話していく上で、自分の気持ちをうまく表現できず泣き出してしまったり怒ってしまったりするお子さんも少なくありません。そこで、今回は自分の気持ちを表現することが苦手な子に対するコミュニケーション方法をお伝えします。
なぜ気持ちを表現するのが難しいのか

気持ちの表現が苦手な理由は大きく分けて3つあります。
自分の感情に気づいていない
大人でもよくあることですが、自分のことに気づきにくい子はたくさんいます。今自分はどう思っているのか、何がしたくて、何がいやなのか。また、調子はどうなのか、疲れているか疲れていないかなど外の調子には表れにくい内面の様子を自分で分析し理解することは難しいです。
そして自分で理解できないことは、それを言葉にして相手に伝えるのはもっと難しいです。
そのため、何がいやで怒っているのか、なんで涙が出るのかなど伝えられず混乱し、もっと怒ったり泣いたりしてしまうということがあります。
自分の意見や考えを言葉で表現するのが苦手
例えば「好きな食べ物は?」「ラーメン!」というように答えがはっきりとわかっているものを表現することは簡単でも、「ラーメンのどこが好き?」など抽象的であいまいなものを言語化して答えることが苦手なお子さんは少なくありません。
「今日は〇〇を食べた」「今日は▲▲した」など現実に起こった事象を答えることはできても、「今日は喧嘩しちゃって、〇〇って言われたことが悲しくて泣いちゃった」などと気持ちと行動を結び付けて表現するなどが難しいのです。
言わなくても相手がわかってくれるという誤解
これは、両親などより身近で生活している人との関係で多いのですが、自分が伝えなくても相手が意図を汲んで返してくれるという経験を積むと、自分が言わなくても相手はわかってくれると理解してしまいます。
それが続くと、言葉で伝えなくてもわかってくれるから伝える必要はないと思い込んでしまうことがあります。

例えば、おなかが空いて冷蔵庫の前に立っているだけで母が「おなかすいたの?クッキー出してあげる」と本人が何がしたいのかを聞かずとも意図を汲みそれを解消するものを提供してしまったり、子供が泣いているときに「どうしたの?〇〇がやだったのね。
じゃあジュースを飲んで元気を出そう!」と何が起きたかを相手がすべて言語化し、その気持ちを解消するためのものも提供すると、子供は自分が話さなくても満足な環境にいることになります。そうすると、自分で気持ちを表現せずとも生活できてしまうのです。
自分の気持ちを表現することが苦手な子へのサポートは?

自分の気持ちを表現することが苦手な子へのコミュニケーションの工夫は主に4つあります。
①2択で答えられるように伝える
今「うれしい」「かなしい」、「これがいい」「いやだ」など2択で話してが提示して、考えて答える機会を作っていきます。そのときに答えられたらその気持ちをしっかり受け止め、「わからない」という気持ちも受け止めていきましょう。
その経験を繰り返すことで、自分が今どんな気持ちなのか少しずつ理解していくのです。
②考えをまとめる時間を作る
ある程度2択で答えられるようになってきたら、少し自分の考えを頭の中でまとめる時間をつくっていきましょう。
癇癪になる前に、「一回考えてみてわかったら教えて」「もし考えてもわからなかったらそのときも声掛けてね」と少しクールダウンする時間を作りましょう。
自分から何かしらを伝えに来たときは、しっかり向き合って聞き、もし黙った状態で動けなくなってしまったら「どうだった?」と一度声をかけてあげるのもよいでしょう。
③SSTのロールプレイングでコツを掴む
先日お伝えした、ソーシャルスキルトレーニング(SST)のロールプレイングやイラストカードを見ながら、今どんな状態なのかどんな気持ちなのか、どんな声掛けをしたらよいかを一緒に考える取り組みをしていきます。
そこで、気持ちと行動の結びつきや、人の気持ちとどんな対応が好ましいのかを学べます。
学びを深めていくことで、自分や他者の感情を理解して、その気持ちがどんな気持ちなのかを表現することにつながっていきます
④気持ちを一緒に考えて代弁する
まだ、感情を伝える言葉がまだ獲得できていない場合や、自分の気持ちに気付いていない場合には、「これがいやだったね」「これがうれしかったね」と気持ちを代弁してあげるようにします。
そうすることで、今の気持ちと「悲しい」や「うれしい」という言葉が結びつき、少しずつ気持ちを言語化できるようになってきます。
すべてを代弁して解消し続けてしまうと、自分で伝えなくてもいいや!という気持ちになってしまうので、慣れてきたら少しずつ自分で考えられるように関わっていきましょう。
まとめ

今回は、自分の気持ちを表現することが苦手な子に対するコミュニケーション方法についてお伝えしました。
子どもは相手が受け入れてくれるかどうかをとても見ているので、どんな気持ちや言葉も一度は受け入れてあげるように関わってあげると、より「伝えたい」という意欲が増すのでおすすめです。
うまく伝えられなくても怒ったりせずに一緒に考えたり代弁したりして、「うまくいえたね」と成功体験を積めるようにしましょう。
それでも、うまく伝えられず集団生活に支障をきたしているときは、専門職にいる機関に問い合わせて一緒に考えられる場所をつくっていくのもよいと思います。

言語聴覚士*はる
経歴:言語聴覚士歴:10年目
2児の母をしながら、児童発達支援施設にて、楽しく遊びながら子供たちの「伝えたい!」という気持ちを育てることをモットーに