すぐ怒る子への接し方!今から出来る予防とポイント
公認心理師*やまおさん
2024/09/20
子どもに限らず、我々人間が生活していくうえで、怒りという感情を抱くことは自然なことであり、怒りの感情を抑圧することは良くありません。
大切なことは、その怒りの感情を相手や周囲にどう伝えて、どう助けてもらうのかということです。
もちろん「すぐに怒ってしまう」子どもの「すぐに」の部分で困っておられる、保護者の方もいらっしゃると思いますので、
そのあたりも含めて、「すぐに怒ってしまう」子どもとどう接していけば良いのかについてお伝えしていこうと思います。
②ずっと怒っているわけではない
すぐに怒ってしまうと言っても、24時間ずっと怒っているわけではないと思います。
起きている時間の中でも、好きなことをやっていて集中できている時間や、お友だちとうまくやりとりができている時間もあるはずです。
大人が注目している行動を
子どもは繰り返しやすい
怒っていない場面に注目しよう
大切なのは、大人が、その子どもが「怒っていない場面」にいかに注目してあげるかということです。 その子どもが集中している時に横に寄り添って黙って見てあげるとか、お友だちとうまくやりとりができた時に「今の、上手に言えたね」など、注目してあげましょう。 もちろん褒めてあげるのも良いのですが、どう褒めたら良いか分からないという場合には、そっと寄り添うとか、声をかけてあげたりして、 「私は、怒っていないあなたに注目しているよ」ということが子どもに伝わるようにしてあげてください。怒っている時間を減らすことも大切ですが、「怒っていない」時間をいかに増やしていくかという視点を決して忘れてはいけません。 怒っている時間を減らそうとばかり考えると、大人は怒っている場面に注目して叱り、その行動をやめさせようとします。
すぐに怒ってしまう子どもは、何度も何度も叱られてしまって、そのうちに自尊感情が低下したり、大人への反発心を抱くようになります。 これらは二次障害と言われるもので、対応次第では予防できるものです。
③怒ってしまう前が大切
「叩いたらダメ」では伝わらない!
もう一歩踏み込んだ伝え方
前段でも触れていますが、怒っていない場面がとても大切です。この落ち着いている場面で、やっておきたいことがあります。
それは、「もし怒ってしまったらどうしよう」ということを子どもと一緒に考えておきましょう。
具体的には、怒りを感じた時にどう行動するのが良いのか、ということを子どもと考えましょう。
腹が立ったから相手を殴った、暴言を吐いた、等は不適切な行動ですので、ついつい大人は「叩いたらダメ」とか「悪口は言わないよ」と約束したくなりますが、それでは不十分です。
さらに具体的に、どう行動すべきかを子どもと一緒に考えましょう。
落ち着いているとき、先にクールダウンを考えておこう
怒りを感じた時には、まずは気持ちを少し落ち着かせる必要がありますので、クールダウンの方法を一緒に考えましょう。 学校や幼稚園なら何ができるか、家なら何ができるか、を考えましょう。 クールダウンの方法を一緒に考えたとき、子どもは「先生や親に言う」とすぐに言いますが、 先生や親もすぐに対応できるわけではありませんし、不在のことだってあります。 できれば1人でどこででも出来るものが良いですね。④怒りそうな場面の前の工夫
大人が見通しを立てて伝えてあげよう
子どもは基本的には見通しを持って行動することは苦手です。すぐに怒ってしまう子ももちろんそうです。
大人から見たら、「この場面、危ないかも。怒っちゃうんじゃない」という場面に突入し、案の定、怒ってしまうということはよくあります。
大人が見通しを立てて、伝えてあげるということが大切です。
具体的な声のかけ方
勝負事に挑戦する場合には、それに参加する子ども全体に「勝ったら嬉しいけど、負けるかもしれないよね。負けて嫌な気持ちになったらどうする?」とか、 テスト等の採点に関わるものであれば「満点を取りたい気持ちはとても良いことだけど、満点じゃなくてもいいんだよ」や「今日のテストは難しいから60点ぐらい取れたらすごいよ」等と伝えてみましょう。大人の見通しの一言で、子どもの行動は変わります。すぐに怒ってしまう子も、自分にだけ「あなた、負けても怒ったらダメだよ」と言われると気分が悪いですが、全体に言われれば問題ありません。
以前に怒ってしまった場合には、こっそりと「今日は大丈夫だよね?」とぐらいは伝えてあげても良いかもしれません。 もし、怒ってしまいそうになっていたら、大人から「今日は初めにどんな話してたっけ?」と確認してあげましょう。
⑤もし怒ってしまったら
それでももし怒ってしまった時、子どもの要求には従わないということが大切です。
怒ることで自分の要求が通るという学習をしてしまうと、ますます怒りやすくなってしまいます。
一時的に怒りが増幅しても、自傷他害のリスクがなさそうなら、そのまま様子を見ましょう。
危険がありそうなら、フォールディング(抱っこ)をして場面を変えるか、他の子に移動を促すなどして、刺激が少ない場面を作りましょう。
まずは落ち着かせることです。「落ち着かないと何もできないよ。あなたの話も聞けない」と伝えて、落ち着くのを待ちましょう。
それから、話を聞きましょう。
多くの場合は、まずは落ち着いたことを評価してから、怒りを抱くことには共感を示しつつ、表現方法が良くなかったという話をすることになるでしょう。
今回の行動を通して、怒っても良いことは何も無かったこと、どう行動すれば良かったのかということ、を振り返ることも必要です。
⑥おわりに
~大人がモデルになっている~
最後に、子どもにとっては、身近な大人が行動モデルになっているということを再度意識してみましょう。
大人が四六時中子どもや周囲に怒ってばかりいたら、子どもが怒りっぽくなって当然です。
大人が子どもに話しかける際には、落ち着いて話しかけるということを意識していくと、子どもの普段の口調が変わります。
口調が落ち着けば、気持ちも落ち着いてきます。
とても些細なことですが、そういう積み重ねが子育てには大切だと思います。
公認心理師*やまおさん
経歴:臨床心理士、公認心理師
児童福祉の分野で心理士をしています(20年以上)。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。