人との距離が近すぎる子へ!トラブルを未然に防ぐ4つのルール
公認心理師*やまおさん
2024/11/22
はじめに
乳児期の頃は、多くの子どもは大人に寄っていきますし、それが自然なことであるので、対人距離が話題になることはほとんどありません。
しかし、幼児期になってくると、子どもにとって「知っている人」と「知らない人」とが明確になってくることもあって、
子どもは相手によって距離を使い分けるようになりますし、それは望ましい姿であると言えます。
時には、初対面の人等の「知らない人」や他の子の保護者等にも何の警戒心もなく、くっついていく子がいます。
くっついてもらった大人から見れば「かわいい」と思えることもありますが、発達と言う視点から考えると、少し心配な状況と言えます。
適切な対人距離があるということを教える
対人距離というのは、相手や状況によって、適切な距離が異なってくるので、子どもにとっては理解しにくいものの一つと言えます。
特に、周囲の状況や空気を読んで行動するのが苦手な子どもにとっては、理解するのが難しいものです。
対人距離をうまく取ることができていない子どもに対しては、まずは、適切な対人距離というものがあることを教えてあげましょう。
子どもと話していると、対人距離は近ければ近いほど良い、それが仲良しということと理解している子が一定数いるように思われます。
そして、このうちの何割の子は、年齢が上がってもそのままの認識でいてしまって、対人トラブルを起こしてしまうことがあります。
この場面ではこのぐらいの距離感というものを一つずつ教えていくのには時間がかかりますが、
まずは、適切な対人距離というものがあって、それは近すぎても遠すぎても相手や周囲に不快感を与えるということを教えてあげましょう。
そして、周囲の大人から見て「この対人距離はおかしい」と思った時には声をかけるからと予告しておくことがとても大切になります。
ルールを明確にする
子ども、特に周囲の状況を見て行動するのが苦手な子どもにとっては、「臨機応変に」とか「周りを見て判断」という指示は、理解できないものです。 どんな子どもでも、適切な対人距離を保つことができるようにするためには、最低限のルールを明確にすることをお勧めします。
ルール1:基本的な距離は腕一本分離れる
会話をする等の日常生活の通常時には、腕一本分離れることを伝えましょう。そして、実際に腕を伸ばしてみて、どれぐらいの距離感になるのかを確認しましょう。
ルール2:プライベートパーツについて話しておく
プライベートパーツという言葉をご存じでしょうか。自分の体の中でとても大切な場所で、自分だけが触って良い、自分だけが見て良い場所です。
考え方は色々あるのですが、基本的には、水着で隠れるところです。触ってはいけないということに関しては、顔や顔のパーツを入れるという考え方もあります。
このプライベートパーツという言葉を子どもたちと共有しておくことが非常に大切になります。
子どもがふざけて触ろうとしたり、見せようとしたりした時に「プライベートパーツはどこだった?」と声をかけることで、それはいけない行動であることはもちろん、
体を大切にしないといけないというメッセージもすぐに伝えることができます。
ルール3:基本的に他者の体には触らない
プライベートパーツの話だけをすると、それ以外のところは触って良いと理解してしまう子どももいますので、 日常生活の中では、他者の体を触ってはいけないこと、園や学校での運動であったり、遊びでタッチするときには必要最低限の範囲で触って良いことを伝える必要があります。
ルール4:嫌だと思ったら相手に伝えて良い
腕一本分の距離では近すぎて不快感を感じたり、遊びの中でタッチされた時の触られ方が嫌だったりと、 上記のルールの範囲内の行動であっても、その行動を不快に感じることがあります。その時には「今のは嫌だった」と意思表示して良いことを伝えておく必要があります。 なお相手に悪意がないのに、「もっと遠く行けよ」とか「触り方が気持ち悪い」と言ってしまうと、トラブルになりかねません。 あくまでも「私は、今のは嫌だと感じた」という形で発言するように伝えておくのが良いでしょう。
相手の性別は問わない
相手の性別は問わず、不用意に自分の体を触られた際には不快だと感じることが大切です。
自分の体を守ること、それは自分の心を守ることにもなります。
このようなことは考えたくないことですが、性犯罪においては、加害者が必ずしも異性とは限りません。
残念ながら、園や学校において、同性の児童あるいは大人から性的な被害を受けるケースは珍しくないのです。
同性から体を触られることはおかしいという考えを子どもが持っておくことで、被害の予防につながりやすくなります。
また、多くの方には信じがたいことかもしれませんが、幼児や小学生の子どもであっても、異性同性問わず、性的問題が起こります。
そこには性的欲求は無く、「おもしろかった」とか「仲良くなりたかった」という思いしかないこともありますが、
行為だけを見れば、性的問題と判断せざるをえないことが起こっているのです。
同性でも異性でも他者の体を触って遊ぶことは悪いことだという思いを、子どもが小さい頃から教えてあげる必要があるのです。
さいごに
みんなが安全で安心して生活を送る上で、対人距離や身体接触に関してのルールは必須だと思われます。
多くの人にとっては、そんなことは自然と身につくものであって、わざわざ教える必要はないと思われるかもしれません。
しかし、自然と身につくまでに時間がかかる子もいますし、きちんと言語化して伝えてあげないと理解できない子もいます。
保護者や周囲の大人が「そのうち分かってくれるから」と放置している間に、何か問題が起こることもあります。
そうならないために、大人が対人距離に関してきちんと子どもに話をしてあげるようにしましょう。
公認心理師*やまおさん
経歴:臨床心理士、公認心理師
児童福祉の分野で心理士をしています(20年以上)。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。