【心理士が解説】子どもがやりたい事しかやらない!どう対応する?

ライター:公認心理師*やまおさん

2024.11.13

はじめに

現代社会で生き行く上では、「やらなければいけないこと」が多少なりともあります。 また、「やりたいこと」と「やらなければいけないこと」ができるだけ重なるような生活をしたいと望む人は多いでしょう。 しかし、子ども達の多くは、「やりたいこと」と「やらなければいけないこと」がなかなか重なりません。
むしろ、乖離しているぐらいが自然なのかもしれませんが、ほとんどの子どもは、やりたくない「やらなければいけないこと」に取り組みます。 その中で、「やりたいこと」には取り組むけれど、「やらなければいけないこと」には二の足を踏むという子どもも一定数います。 大人が「やりたいことだけやっていて良いよ」と言えたら、大人も子どもも楽なのですが、園や学校で関わる大人はそうも言えないでしょう。

興味のあることに
取り組めるということ

「興味のあることしか取り組まない」という表現ではなく、「興味のあることには取り組む」という表現に修正するところから始めましょう。 興味と取り組みの例として、私が発達支援の現場で出会う児童虐待を受けてきた子どもたちを例に上げます。 こういった子どもたちの多くには、「興味のあること」がほとんどありません。 たとえば、買い物等に行くとあれも欲しい、これも買いたいと興味を示しているように見えますが、 実際にそれらを手に入れるとすぐに「もう飽きた」「やっぱり、別のが良かった」ということになります。 この子たちは、親や大人からの愛情を常に求め、飢餓感を抱え続けているために、常に満たされない欲求を抱えているのです。

「興味のあること」とは

それでは、「興味のあることに取り組む」ことができる子どもに話を戻しましょう。 子育て相談を受ける際、「この子は、興味のあることしか取り組まないんです」という相談に触れることもあります。 「でも、興味があることには取り組めるんですよね」とこちらが返すと「あの子が興味があることなんて、遊びばっかりで。 どうしたら勉強してくれるんですかね」と深く悲観し、悩まれています。
その後、子ども本人に会ってみて、何に興味があるのかと聞くとゲーム等の話をした後に、「恐竜」「虫」「動物」という話が出てきます。 恐竜、虫、動物、あるいはその他の子どもが興味を持っている対象も勉強ではないのでしょうか。そして、強く悲観するほど残念なことでしょうか。

興味の対象によっては、自分の子どもが興味を持っていることに対して否定的なスタンスを取られる保護者の方もいます。 どんな対象であっても、今、子どもが何かに興味を持てていることはとても素晴らしいことであること(それは今までの子育ての良い方向での成果とも言えるでしょう)という認識を持つことが必要です。
子どもが興味を持っていることに対して、親が肯定的か否定的かということは、子ども自身を肯定的に捉えているかどうかということにつながっていきます。 子どもが何か一つでも興味を持つ対象があれば、そのことを応援してあげることがとても大切です。

興味のないことにどう繋げていくか

理想としては、子どもが興味があることに取り組む中で、その興味が膨らんで、色々なことに興味を持って行くという形です。
恐竜が好きという子どもであれば、自分で図鑑を読みたいから文字を勉強する必要がある、年代や大きさは数字で表現されるので数字は必要、というところから始めて、 博物館に行きたいとなればどこに恐竜の博物館があるのかを調べる必要がある、そのためには地図を見ないといけないということもあります。
もっと発展したら、インターネットで外国のサイトを見たり、外国の本を読みたいから英語も勉強しないといけないというところまで広がります。 家庭での取り組みであれば、上記のように、興味のあるところから、その子のペースで広げていけば良いでしょう。

しかし、園や学校となるとそうも言っていられません。そうなると教材や学習活動の中身に、その子が興味を持てる内容を扱うことが有効だと思います。 恐竜に興味を持てる子であれば、読み聞かせに恐竜の本を使う、ひらがなやカタカナの練習の単語を恐竜の名前にする、算数の文章題で恐竜をテーマにしてみる等、 大人の工夫次第で興味のあるものをうまく活用することができます。

どうしても興味がないときには

多くの子どもにとって、園や学校で全ての活動に興味を持つことは難しいでしょう。 特に興味があるものには熱中できるけれど、興味がないものには取り組めない子どもであれば、なおさらだと思います。 どうしても興味が持てない時には、どのように過ごすのかということも具体的に教えてあげることも必要です。 自分は興味がないから立ち歩く、大きな声を出す、は良い過ごし方とは言えません。 どうしても興味が持てない、取り組めない内容の時にはどうするのかを事前に大人と決めておくのが良いでしょう。

興味がないから取り組まなくて良いわけではない

もちろん、興味がないことには取り組まなくて良いと初めから言ってしまう必要はありません。 初めは興味がないと思っていても、触れてみたら興味がわくということもありますので、 「まずはちょっとやってみよう」というスタンスで少しでも取り組める方向で促す必要はあります。 その段階で、少しでも興味を持つことができて取り組むことができたら、そこはたくさん評価してあげましょう。 興味を持てていない側面ではなく、少しでも興味を持てたという部分に大人が注目してあげることが必要です。

最後に

子どもは好奇心の塊と言われるように、子ども達の多くは、幅広いものに興味を持ちます。 あれも知りたい、これもやってみたいというのが、子どもの本来の姿だと言えます。 しかし、大人があれはダメ、これはしょうもないと制限をかけているうちに、興味の幅が狭まってしまうこともあるでしょう。
興味があることしか取り組まないと聞くと、興味がないことにも取り組みなさいと言いたくなりますが、 まず初めに我々大人にできることは、興味の幅を狭めない、興味があることを応援してあげる、ということではないでしょうか。

やまおさん

経歴:公認心理師 20年
児童福祉の分野で心理士をしています。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。


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