【心理士直伝】癇癪で服を脱いでしまう子へのサポート!

公認心理師*やまおさん

2025/02/26

はじめに

 嫌なことがあると、いわゆる癇癪を起こしてしまうことは、多くの子どもにとってよく見られることです。しかし、癇癪の仕方によっては、大人も急いで対応する必要性を感じるものがあります。
その一つが、服を脱ぐという行為です。家の中ならまだしも、外出先や、園や学校で癇癪を起して服を脱ぎ始めてしまうと、大人がじっと様子を見ておくというわけにもいきません。ここでは、癇癪で服を脱いでしまう子どもの対応やサポートについて、話を進めていきたいと思います。

どうして服をぬいでしまうの??

癇癪を起して服を脱ぐという行為を、なぜ子どもはとるのでしょうか。これは癇癪に伴う行為全般に言えることですが、癇癪を起こすことで、子どもは自分の要求が通る等のメリットを体験します。その体験がその行為を継続したり、強化している可能性が高いと言えます。
それでは、服を脱ぐという行為ととるこで、子どもにとって、どんなメリットが生じているのでしょうか。

①注目を浴びることができる

もっと構って欲しい・自分の話を聞いて欲しい・自分の要求を通したいという思いが背景にある可能性があります。普通に泣いていても大人にスルーされていたのに、服を脱いだら、大人が慌てて寄ってきたという体験を積み重ねてご学習がおこっている可能性があります。

②本来の問題点を誤魔化すことができる

自分が悪いことをして叱られて癇癪を起した際に、大人が慌てて「まずは服を着て」と言って優しく対応されたり、大人との論点が服を着るや着ないにすり変わって、本来自分がやってしまったことに対して叱られずに済んだという体験があって、そのことで、服を脱ぐという行為が強化されている可能性があります。

③服を脱ぐことに「快」が伴う

肌の過敏性があって、できるだけ薄着で生活したい・できたら裸でいたいという子どもが一定数います。そういう子ども達にとっては、服を着ること自体が不快で気持ちが落ち着いている時は何とか耐えている。ただ更に心的負荷がかかってしまうと、我慢ができずに服を脱いでしまい不快感から抜け出そうとすることがあります。

癇癪への対応はどうする?

癇癪が起こってない落ち着いている時に話をする

・なぜ服を脱ぐという行為がいけないのかを、子どもが落ち着いている時に話してあげましょう。周りの人がびっくりするとか、不快感を持つという話も必要かもしれませんが、まずは、服を脱ぐことで、その子ども自身にどんなデメリット(損)があるのかを教えてあげることが大切です。
その子どもの年齢にもよりますが、服を脱ぐと風邪をひいてお薬を飲まなければならないよなど。

・イライラしたり、気持ちが爆発しそうになった時に、癇癪以外の方法で、どう気持ちを解消するか、落ち着けば良いのかということを、大人と子どもとで共有しておきましょう。そして、可能であれば、目に見えるところに掲示するなどして、子どもがイライラしてきた時に、その掲示が見えるようにしておきましょう。

・癇癪を起して服を脱いだ時に、大人はどう対応するのかを、事前に子どもに伝えておきましょう。

癇癪が起こった後のサポート

・淡々と「服を着ましょう」と伝えましょう。注目を集めることで何らかのメリットを享受している可能性がありますので、大人が冷静に落ち着いて対応することが大切です。
心の中では驚いていても、その行為に対して大人は動じていない、そんなことをしても注目を集めることはできないということを伝えるために、落ち着いておくことが大切です。
また、脱ぐことで、大人とのコミュニケーションを持つことができるという体験にならないようにするためにも、まずは「服を着ましょう」という内容だけを伝えましょう。服を脱いでも大人は相手にしてくれないという体験を積み重ねることが大切です。

・子どもが落ち着いて服を着た後に、子どもの話を聞いたり、振り返ってみましょう。この時に、服を脱いだことを叱責することは良くありません。子どもとしては服を着たら叱られたという体験になってしまうからです。

さいごに

癇癪の際に、服を脱いでしまうことについて触れてきました。しかし、子どもや大人の日常生活の質を向上させるためには、癇癪が起きないような環境を作っていくことが最も大切です。
子どもがどんなことにストレスを感じているのかが分かれば、その要因を取り除いたり、軽減してあげる必要があります。保護者の方と話していると、そんなに甘やかしていいんですかと言われることもありますが、日々嫌なことがあって癇癪を起している生活と、癇癪を起さずに平和に過ごせる生活、どちらが子どもにとって望ましい環境でしょうか。
癇癪を起してしまう子どもへの対応を考えると、いかに癇癪を起さない時間を増やしていくのかという視点を忘れてはいけません。

公認心理師*やまおさん

経歴:臨床心理士、公認心理師

児童福祉の分野で心理士をしています(20年以上)。発達障害児への心理教育や、虐待被害を受けた児童への心理ケア等を担当しています。

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